茨城県央地域における定住自立圏構想【医療分野】

地域医療の現状 ~「みんなで守ろう地域医療」~

・コンビニ受診って?

・救急車がタクシー代わり?

・お医者さんがいなくなる?

・赤ちゃんが産めなくなる?

・地域医療が崩壊する?

こんな言葉を皆さんも耳にしたことがありませんか?これらはみな、地域の医療を取り巻く現状を表す言葉です。どういうことなのでしょうか。

 

茨城県の医師の現状

茨城県の医師の数は、全国ワースト2で、全国平均を大きく下回っているという報道を皆さんも耳にしたことがあると思います。全国的に医師不足が叫ばれ、国は医学部定員を増やすなど国をあげて医師の増加に取り組んでいます。

では、私たちが暮らし、ともに連携しながら共存する区域である茨城県央地域の病院数や医師数を見てみましょう。

平成26年 人口10万対病院数及び診療科別医療施設従事医師数

区分 一般病
院数(所)
一般診
療所数(所)
医師数
(人)
小児科
(人)
産婦人科
(人)
内科
(人)
外科
(人)
全国 5.9 78.5 233.6 13.2 8.3 48.2 12.1
茨城県 5.5 58.2 169.6 9.7 6.9 32.9 7.7
水戸市 9.3 90.1 237.7 18.8 15.5 40.2 10.7
笠間市 5.1 49.8 271.5 3.9 3.9 29.7 5.2
小美玉市 7.7 34.6 70.2 1.9 0.0 23.4 0.0
茨城町 5.9 41.6 317.8 3.0 0.0 18.2 33.3
大洗町 5.7 56.9 99.4 0.0 0.0 52.6 5.8
城里町 14.3 43.0 44.3 0.0 0.0 24.6 0.0
那珂市 5.6 59.3 100.5 1,9 0.0 42.8 3.7
ひたちなか市 4.5 52.2 125.7 5.7 6.4 28.7 4.5
東海村 5.3 50.2 110.7 18.4 0.0 29.0 7.9

※病院数は平成24年10月1日現在、医師数は平成26年12月31日現在の数字

県央地域においては、大きな公的病院などがある水戸市や笠間市、茨城町については医師数が全国平均かそれをやや上回るものとなっていますが、当地域全体としては全国よりも少ない状況にあります。また、全国的に医師の診療科偏在が問題となっていますが、当地域においても小児科や産婦人科の医師数は全国的にみて低位であり、医師の地域偏在、診療科偏在など、地域住民の健康を守り、地域で安心して毎日の生活を送ることができる医療環境が整っているとは言えない状況です。

ご覧のように、当地域においても医師不足は深刻な問題であり、適切な医療体制を維持しようと奮闘する医師等の負担が急激に増加する事態となっています。

 

定住自立圏構想での取組

 

定住自立圏構想とは、特に地方において、人口減少、少子高齢化が進行する中、その地域ならではの強みを活用しながら、市町村が相互に役割分担し、連携、協力することにより、地方圏においても安心して暮らせる地域を各地に形成し、地方圏の人口定住を促進する取組です。

水戸市、笠間市、ひたちなか市、那珂市、小美玉市、茨城町、大洗町、城里町及び東海村で形成される県央地域では、「茨城県央地域定住自立圏共生ビジョン」に基づき、目指すべき将来像「安心して住み続けられる,笑顔で行き交う圏域」を掲げ、その実現を目指し、相互の役割分担の下に、定住に必要な生活機能の確保・充実を図るとともに、地域の活性化に努め、持続可能な圏域を目指し、各種事業を実施するものです。

(定住自立圏構想について詳しく知りたい方は、こちらから)

ビジョンにおいては、生活機能の強化を図るため、医療分野における取組を行います。住民の安心・安全な生活に必要不可欠な医療の現場では、医師不足が深刻化しており、目指すべき将来像の実現のため、初期救急医療の充実に向けた取組などを推進していく必要があります。しかし、これらの実現のためには皆さんの理解や協力が必要となります。

それでは、まず、圏域内の地域医療の現状や課題について、救急医療、小児医療、産婦人科、看護師に分けて、皆さんにお知らせしたいと思います。

救急医療

病気になった時、けがをした時、私たちは当然のように病院で診療を受けることができると思っています。これは、「救急医療」と言って、休日や夜間などに急な病気やけがをした方を診療するための体制が整備されているからなのです。

救急医療体制は症状や緊急度に応じて、初期・二次・三次のつに分かれています。比較的軽症な救急患者を診療する初期(一次)救急として、市町村が医師会等の協力を得て、休日夜間診療所を設置しています。この診療所、実は昼間通常診療を行った医師たちにより支えられていることを知っていますか。診療所を担当する医師たちは、昼間と夜間の診療を受け持ち、場合によっては夜中までの勤務となることもあり、翌日も通常業務となる医師への負担がさらに大きくなっています。このように、休日夜間診療所は医療従事者の献身的な努力によって支えられているのです。

圏域内の休日夜間診療所の設置状況(初期救急医療)

1.水戸市休日夜間緊急診療所 水戸市笠原町993番地の13(水戸市保健センター2階)

 TEL029‐243‐8825  (歯科専用)029‐243‐8840

曜日等 小児※ 内科 外科 歯科
夜間 毎日
受付時間 19時30分~22時15分
診療時間 19時30分~22時30分
休日 日曜・祝日、12月30日~1月3日(1月1日は午後のみ)
受付時間 午前の部 9時00分~11時45分
午後の部 13時00分~15時15分
診療時間 午前の部  9時00分~12時00分
午後の部 13時00分~15時30分

※小児科は内科系の診療のみです。

 

2.笠間市立病院 笠間市中央1丁目2番24号 TEL 0296-77-0034

曜日等 小児科 内科 外科 歯科
夜間 月曜日~金曜日(祝日、12月31日~1月3日を除く)
診療時間 19時00分~21時00分
休日 日曜日(12月30日~1月3日を除く)
診療時間 9時00分~17時00分

※担当医が不在の場合もありますので、事前に電話確認のうえ、受診してください。

3.ひたちなか市休日夜間診療所 ひたちなか市石川町20番32号(日製ひたちなか総合病院西駐車場敷地) TEL 029-274-3240

曜日等 小児科 内科 外科 歯科
夜間 土曜日、日曜日、祝日、12月31日~1月3日
受付時間 19時00分~21時30分
休日 日曜、祝日、12月31日~1月3日
受付時間 午前の部  9時00分~11時30分
午後の部 13時00分~15時30分

※専門医外の診療になることがあります。

 

4.石岡市緊急診療(石岡市医師会病院) 石岡市大砂10528‐25 TEL0299‐23‐3515

曜日等 小児科 内科 外科 歯科
夜間 土曜日、日曜日、祝日、12月31日~1月3日
受付時間 18時00分~21時30分
休日 日曜、祝日、12月31日~1月3日
受付時間 午前の部  9時00分~11時30分
午後の部 13時00分~15時30分

 

休日夜間診療所ってどんな所?

  • 休日や夜間に開いている診療所は、緊急性の高い患者を受け入れるのが主な目的であり、日中の診療や検査が受けられるまでの応急的なもので、検査項目も限られています。継続的な治療は行っておらず、処方される薬も原則1日分です。このため、翌日にはかかりつけ医などで十分検査や治療を受けることが必要な場合もあります。
  • 休日・夜間は割増料金で医療費が高くなります。
  • 休日や夜間が混んでいないわけではありません。休日夜間診療所においても、風邪やインフルエンザなどにかかる方が増える時期には、待ち時間が2時間以上に及ぶこともあります。

 

増えるコンビニ受診

休日夜間診療所を利用する中には軽症患者の利用が見受けられます。いつでもどんな症状でも診てもらえるという安易な考えで、休日や夜間に緊急性のない軽症患者が「日中仕事を休めない」「夜の方がすいているから」「風邪気味で,熱が出たら不安だから」などの個人的な理由で受診する、いわゆる『コンビニ受診』が増えています。

コンビニ受診が増えてしまうと、今、本当に治療を必要としている方への適切な対応が困難になってしまします。また、患者が増えることで医師たちの負担が過重となり、疲弊し、病院を辞めてしまったり病院が減ってしまったりして、救急医療、ひいては地域医療の崩壊にもつながるおそれがあります。

 

救急医療を守るために私たちにできること

・何でも相談できるかかりつけ医を持とう!

「かかりつけ医」なら普段の体調や病歴などを把握した上で、適切な診断や治療をしてもらえます。

・できるだけ「通常の診療時間内」受診を!

休日夜間診療所はあくまでも「急病患者」のためのものです。そして、昼間の診療時間内は外来の患者さんを診るために必要な医療スタッフも十分にそろっています。診療時間内に受診しましょう。

・病院に行くその前に、もう一度考えよう!

平日の診療時間内に受診することができないか、もう一度よく考えてみましょう。

しかし、小さなお子さんは夜間や休日に急に発熱を起こすこともあり、病院に行くべきかどうか迷うことがあるかと思います。そのような時は、下記をご利用ください。

茨城子ども救急電話相談 看護師などの専門家がすぐに医療機関にかかるべきかをアドバイスします。
〔相談時間〕
平日(月曜日~土曜日) 18時30分~翌日8時00分
日曜、祝日、12月29日~1月3日 8時00分~翌日8時00分
プッシュ回線の固定電話、携帯電話
TEL ♯8000
すべての電話から
TEL 029‐254‐9900
ウェブサイト「こどもの救急」  症状に合わせた対処法のほか、家庭内で起こりやすい事故を防ぐためのポイントなどを掲載しています。
〔対象年齢〕 生後1か月~6歳児
ホームページ  http://kodomo-qq.jp/

※救急受診の目安・判断チェックリスト もあります。

小児医療

茨城県の小児科医数は、平成24年12月末現在(医師・歯科医師・薬剤師調査)で279人であり、人口10万人対では9.5と全国平均の12.8を大きく下回っており、全国最下位です。

小児科は、時間外の対応の多さや不採算性が高い科目と言われ、全国の傾向と同様、茨城県においても、小児科を標榜する医療施設は年々減少しています。

また、近年、子どもを大切に育てたいという保護者の意識の高まりとともに、専門医志向、病院志向の傾向が強く、特に、休日・夜間、小児救急外来を設けている病院に患者が集中し、その多くを軽症患者が占める傾向があります。

一般病棟数、小児科標ぼう病院数の推移

区分 平成10年 平成16年 平成18年 平成20年 平成22年 平成24年 平成27年
茨城県 一般病床数 196 181 181 171 164 162 159
小児科標榜病院数 104 91 92 86 81 78 72
全国 一般病床数 8,266 7,999 7,870 7,714 7,587 7,493 7,416
小児科標榜病院数 3,720 3,231 3,075 2,905 2,808 2,702 2,642

※「医療施設調査・病院報告(厚生労働省)」より

小児科医師数の推移

区分 平成10年 平成14年 平成16年 平成18年 平成20年 平成22年 平成24年
茨城県 小児科医師数(人) 225 224 244 231 245 249 279
人口10万人当たり(人) 7.5 7.5 8.2 7.8 8.3 8.4 9.5
全国 小児科医師数(人) 13,989 14,481 14,677 14,700 15,236 15,870 16,340
人口10万人当たり(人) 11.1 11.4 11.5 11.5 11.9 12.4 12.8

※「医師・歯科医師・薬剤師調査(厚生労働省)」より

圏域内における休日・夜間の診療体制では、夜間の小児医療を実施しているところが少なく、不足している状況です。また、医師の高齢化も深刻となっており、休日夜間診療所の当番医の確保にも支障をきたしており、地元の医師会会員の他に大学病院や県立こども病院からの派遣協力を受け、その運営を維持している状況にあります。
今後、新規開業がなければ、10年後には70歳を超える医師も多くなり、小児科の運営はできなくなる可能性もあります。
私たちが未来につなぐ子どもたちを産み育てるためには、休日夜間診療所、小児医療機関ともに必要不可欠な存在であり、運営を維持するためには、医師の負担を減らすということが重要なのです。そのために圏域住民ができることは、救急医療と同様に、ガイドブックやセミナーを通して小児医療に関する知識等を持ち、適正受診を心掛けるということであり、皆さんの協力が必要となります。

 

産婦人科

茨城県の産婦人科医数は、平成24年12月末現在(医師・歯科医師・薬剤師調査)で201人であり,人口10万人対では6.8と全国平均の8.2を下回っています。しかし、当地域については、水戸市に医療機関の一定の集積があるため、全国平均を上回る状況にあります。

産婦人科医の推移

区分 平成18年 平成20年 平成22年 平成24年
全国 9,592 10,012 10,227 10,412
7.5 7.8 8.0 8.2
茨城県 189 196 199 201
6.4 6.6 6.7 6.8
県央地域 53 53 59 62
7.4 7.4 8.2 8.6

※上段:実数(人) 下段:人口10万対医師数(人)「医師・歯科医師・薬剤師調査(厚生労働省)」より

周産期

圏域内には、産科医療機関が16箇所あります。これらは正常分娩を取り扱うもので、そのうち10箇所は水戸市内に集中するなど地域偏在が顕著となっています。
早産や他の疾病との合併症などリスクの高い妊婦を受け入れる医療機関は、総合周産期母子医療センターの指定を受けている水戸済生会総合病院と、地域周産期母子医療センターの指定を受けている水戸赤十字病院の2箇所ですが、日立製作所日立総合病院のリスクを伴う出産の受け入れ停止の影響もあり、県北地区のリスクのある妊婦も多く受け入れている状況にあります。
圏域内においては現在、これらの産科医療機関と総合周産期母子医療センター等が、それぞれが持つ機能を分担しあい、緊密に連携しながら周産期医療体制を維持しています。
しかし、産婦人科の新規開業はここ20年間全くなく、平均年齢は小児科同様60歳を超えるなど高齢化が進んでいます。この状況は、5年,10年後の将来を考えると危機的状態であり、周産期医療体制の崩壊の可能性も否定できません。

 

婦人科

圏域内において、婦人科系の手術を取り扱う医療機関は少なく、水戸赤十字病院や水戸済生会総合病院、茨城県立中央病院等の大きな病院のみとなっています。また、県北地区における取扱医療機関は皆無に等しく、特に、悪性腫瘍については、水戸赤十字病院と茨城県立中央病院が一手に受け入れている状況です(水戸赤十字病院については現在受入停止中)。
このように、県央・県北地区に対応可能な医療機関が少ないため、患者が集中し、予約が取りにくい、混雑が激しい、やむを得ず県南や県外で受診しなければならないなど、患者の負担は大きいものとなっています。

圏域住民が安心して子どもを産み育てられる環境を整えるためには、周産期医療及び婦人科医療の安定的提供体制の確保について、圏域全体で連携し支える取組が重要です。
茨城県央地域定住自立圏共生ビジョンにおいては、喫緊の対応策として、水戸赤十字病院の産婦人科医確保のための経費について財政支援を行うこととしています。

看護師

茨城県の看護師は、平成26年12月末現在で19,675人、人口10万人対では674.0と全国平均の855.2を大きく下回り、全国44位という状況です。

看護師数の推移

 

区分 平成18年 平成20年 平成22年 平成24年 平成26年
全国 811,972 877,182 952,723 1,015,744 1,086,779
635.5 687.0 744.0 796.6 855.2
茨城県 14,327 15,562 17,092 18,646 19,675
482.1 525.0 575.5 633.6 674.0
県央地域 5,448 5,773
755.6 803.6

※上段:実数(人) 下段:人口10万対医師数(人) 「茨城県保健福祉部 平成26年度保健師助産師看護師の現状」より

看護師国家試験の合格者数は毎年5万人ほどで、准看護師試験の合格者も含めると新しく看護師になる方の数はさらに多くなり、看護師数は年々増加しています。
しかし、看護師の離職率は毎年11%前後で推移しております。そのため、国家資格を持っていながら、仕事に就いていない潜在看護師が約70万人にも上るとされていますが、数字の上では、新たに増える看護師と転職・復職する看護師の人数の方が多いことから、看護師数がマイナスになることはありません。
では、なぜ実際の医療現場では看護師が不足しているのでしょうか?
看護師は、急患が入ると退勤時間になっても退勤できなかったり、夜勤があったりするなど変則的な勤務時間であり、離職の理由の一つとして挙げられます。また、医師が行ってきた注射や点滴を行うようになるなど職務内容の高度化や、カルテの整理や記録等に費やす時間が増えるなど多忙化していることも理由として挙げられます。
さらには、超高齢社会を迎え、認知症の高齢者が増えるなど患者の病状が変化しているのも原因として挙げられます。目が離すことができないために付きっきりでケアを行うことや重症人が増えているなどが原因で、病院内の一人当たりの業務の負担が大きくなってしまっているのが現状です。
離職のほか、日々の業務の増加による人手不足の状況がさらに看護師不足を引き起こしています。その結果、病院では病床を減らしたり、患者の受け入れを制限したりする事態が発生し、私たち住民にも影響を及ぼします。医療を安定的に提供するためには、看護師等の確保が急務です。
看護師確保対策として、一番には労働条件や職場環境などの待遇改善ですが、すでに看護師資格を持っている潜在看護師70万人に復帰してもらえば、問題は解消に向かうとも考えられます。しかし、結婚・出産を経た看護師にとって、育児と家事、仕事の両立は難しく、出産後復職したくてもできない看護師が多くいることが、離職率の増加に拍車をかけているのが現状です。
茨城県央地域定住自立圏共生ビジョンにおいては、茨城県看護協会等と連携し、まず看護師の再就職のきっかけづくりを図り、看護師等の確保を進めていくこととしています。

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